腕時計のねじ込み式リューズ――小さな部品に込められた防水性能

腕時計のねじ込み式リューズ――小さな部品に込められた防水性能

日々多くの腕時計をお預かりする中で、 「リューズがうまくねじ込めない」 「以前よりねじ込みが浅くなった」 といったご相談をいただくことがあります。

今回は、腕時計の防水性能にも関わる 「ねじ込み式リューズ」の仕組みと、 使用する際の注意点についてご紹介します。

ねじ込み式リューズとは

腕時計の側面についている小さなつまみを「リューズ」と呼びます。 時刻や日付を合わせたり、機械式時計ではゼンマイを巻き上げたりするために使用する、 腕時計には欠かせない部品です。

リューズにはいくつかの構造がありますが、 その一つが「ねじ込み式リューズ」です。

ねじ込み式リューズは、操作を終えたあとにリューズを回し、 ケース側へねじ込むことで固定する構造になっています。

ケースにしっかりねじ込まれた腕時計のねじ込み式リューズ
ケースにしっかりねじ込まれた状態のリューズ

なぜリューズをねじ込むのか

ねじ込み式になっている大きな理由の一つが、 腕時計の防水性能です。

腕時計の内部には、精密なムーブメントが収められています。 時計内部に水や湿気が入り込むと、 部品のサビや故障につながる可能性があります。

多くの腕時計では、リューズ周辺にゴムパッキンを使用することで 水や湿気の侵入を防ぐ構造になっています。 さらにリューズとケースの接合部分をねじ込み式にすることで、 リューズ周辺をしっかりと固定し、 防水性能を確保しやすくしています。

特にダイバーズウォッチなど、 水に触れることを想定した腕時計では重要な仕組みです。

時計の外側にある小さな部品ですが、 リューズは時計内部を守るうえで重要な役割を担っています。

時刻や日付を合わせるときはリューズを緩めます

ねじ込み式リューズで時刻や日付を合わせる場合は、 まずリューズのねじ込みを緩めてから操作します。

リューズを緩めたあと、必要な位置まで引き出すことで、 時刻合わせや日付合わせなどを行うことができます。

ねじ込みを緩めて引き出した腕時計のリューズ
ねじ込みを緩め、リューズを引き出した操作時の状態

操作が終わったらリューズを元の位置まで戻し、 ケース側へしっかりとねじ込んで固定します。

操作後はリューズの締め忘れにご注意ください

リューズが十分にねじ込まれていない状態では、 本来の防水性能を発揮できない場合があります。 時刻や日付を合わせたあとは、 リューズがきちんと閉まっていることを確認してください。

強く締めすぎる必要はありません

ねじ込み式リューズは、 「強く締めれば締めるほど安心」というものではありません。

必要以上に強い力を加えると、 リューズやケース側のねじ山を傷めてしまう可能性があります。

リューズとケース側のねじ部分が水平になるよう意識しながら、 無理な力を加えず、自然にねじ込んで固定することが大切です。

腕時計のねじ込み式リューズを手で回している様子
無理な力を加えず、リューズをゆっくりとねじ込みます

身近なものに例えると、 ペットボトルのフタを閉める感覚に近いと言えます。 フタがリューズ、飲み口側がケースのねじ部分という関係です。

フタが斜めになった状態で無理に締めようとすると うまく閉まらないのと同じように、 リューズについてもねじ山が正しく噛み合った状態で 操作することが重要です。

機械式時計はリューズを操作する機会が多くなります

機械式時計は、ゼンマイがほどけて動力がなくなると時計が止まります。 時計が止まった場合には、 ゼンマイの巻き上げや時刻合わせなどのために リューズを操作することになります。

そのため、クオーツ時計と比較すると、 ねじ込み式リューズを開閉する機会が多くなる場合があります。

日頃から無理な力を加えず、 正しい位置でゆっくりと操作することが、 リューズやねじ部分を長くお使いいただくためにも大切です。

リューズがねじ込めなくなった場合

長年の使用などにより、 リューズ側とケース側のねじ山・ねじ溝が摩耗すると、 正常に噛み合わなくなることがあります。

その結果、 「リューズがねじ込めない」 「以前よりねじ込みが極端に浅くなった」 といった症状が現れる場合があります。

このようなねじ込み不良を修理する場合には、 リューズだけでなく、 ケース側のねじ部品であるチューブの交換が 必要になることがあります。

部品交換が必要になる場合があります

メーカーやブランドによって部品を入手できるかどうかは異なりますが、 部品の手配が可能な場合には、 千年堂では時計の状態を確認したうえで リューズ一式の交換をご案内する場合があります。

小さなリューズにも大切な役割があります

普段何気なく操作しているリューズですが、 その小さな部品には、 時計内部を水や湿気から守るための工夫が施されています。

腕時計の魅力は、文字盤や針、ケースなどのデザインだけではありません。 リューズのような小さな部品にも、 腕時計を安全に使用するための仕組みが詰まっています。

次に腕時計を手に取ったときには、 リューズの構造や動きにもぜひ注目してみてください。

リューズのねじ込みに違和感がある場合は無理に操作しないようにしましょう

ねじ込みにくい状態で無理に回すと、 ねじ部分をさらに傷めてしまう可能性があります。 リューズがねじ込めない、以前より浅くなったなどの症状がある場合には、 時計の状態を確認したうえで修理をご検討ください。